四半期のレビューで獲得単価の推移を並べると、たいてい前の期より上がっています。会議の空気は、そこから自然に「次にどのチャネル(リードを獲得する経路)を足すか」へ流れていきます。

けれども、単価が上がったという事実だけでは、経路を増やすべきなのか、いま持っているものを直すべきなのかは決まりません。獲得したリードのうち相当な割合が、営業のフォローを受けないまま消えていく——B2B企業のマーケティング部門が生み出したリードと営業担当のフォローを対象にした査読済み研究は、この現象に名前まで与えています。増やす前に見る場所が、まだ自社の中に残っているということです。

この記事では、チャネルを足す前に見る場所を、消えているリード・単価をそろえる時点・待ちの構造という3つに絞って整理します。そのうえで、待たない選択肢を採るときに最初に決めるのは件数ではなく条件である、というところまでを書きます。条件を決めてから送るまでの実務は、サービス資料にまとめています。

単価が上がると、問いはいつのまにか「どのチャネルを足すか」にすり替わる

獲得単価は割り算です。分子には、そのチャネルに投じたものが乗ります。分母には、獲得できた件数が乗ります。数字が悪化したとき、打ち手が「分子を削る」か「分母を増やす」かの二択に見えるのは、この形のせいです。そして分母を増やす手段として真っ先に浮かぶのが、まだ試していないチャネルです。

新しいチャネルを足す判断は、組織の中では通しやすい提案でもあります。

  • いまの運用を止めずに始められる(既存の担当の仕事を取り上げない)
  • 外に出しやすく、社内の人の配置を変えずに済む
  • 成果が出なければ止められる、と説明できる

どれももっともな理由です。ただしこの3つは、いずれも「始めやすさ」の理由であって、「そこに伸びしろがある」理由ではありません。伸びしろがどこにあるかを確かめないまま経路だけが増えると、管理する対象が増え、どの経路がどれだけ効いているのかはかえって見えにくくなります。単価が悪化した理由を説明できないまま、比べる対象だけが増えていく状態です。

そもそも、分子の中身もたいてい揃っていません。外に出した経路では、支払った分がそのまま分子に乗ります。一方、社内で回している経路では、担当者が調べ物や下書き、確認のやり取りに使った時間が分子から抜け落ちがちです。抜け落ちたまま横に並べれば、社内の手間で成り立っている経路ほど安く見えます。単価という一つの数字は、そこに何を入れたのかを書き出さないかぎり、比較の道具にはなりません。

もう一つ、見落とされやすいことがあります。単価は、獲得の瞬間に確定する数字ではありません。獲得した後に何が起きたかまで含めて、はじめてその1件が見合っていたのかどうかが決まります。獲得の時点で切り取った数字だけを並べているかぎり、比べているのは成果ではなく、入口の通りやすさです。

この記事で見る場所は、順に3つです。獲得したリードが後工程のどこで消えているか。単価をどの時点でそろえて比べるか。そのチャネルは、相手が動くのを待つ構造なのかどうか。3つとも、新しい経路を探し始める前に、いま手元にある記録だけで確認できます。

獲得したリードは、思っているより手前で消えている

リードが消えるという話は、現場の感覚論に聞こえるかもしれません。けれどもこれは、B2Bマーケティングの研究で名前を与えられてきた現象です。Journal of Marketing 掲載研究が指摘する現象として、マーケティング部門が生み出したリードの70%が営業担当に追いかけられないまま消えていく「セールスリード・ブラックホール」があります。Sabnis らの研究(2013)はこの名を掲げ、B2B企業4社・営業担当461人のデータから、フォローされるかどうかを何が左右するのかを分析しました。ただしこの70%は、この研究自体が測定した値ではなく、先行報告に基づいて指摘されてきた現象の記述です。対象はB2B企業のマーケティング部門由来のリードと営業担当のフォローであり、フォーム営業の反応率を示す数値ではありません。

この数字を「営業が怠けている」と読むのは、原典の趣旨から外れます。論文自身が、供給されるリードの量が多すぎて、望んでも全部は追えない場合があること——つまりこの数字はマーケティング側の不備も映していることを、注記として断っています。研究が実際に分析したのは、営業担当の経験が長くなるほど、フォローの追跡管理やリードの量への反応が弱まり、事前の絞り込みの質への反応は強まる、という構造でした。誰かを責めるための数字ではなく、リードが渡された後にも歩留まりの段がある、という事実を示す数字だと私たちは受け取っています。

獲得したリードが商談に届くまでの段
獲得した件数
資料の請求・問い合わせ・名刺の交換
連絡が試みられた件数
担当に渡り、実際に手が動いた分
会話が成立した件数
先方の担当と話が始まった分
商談になった件数
日程と論点が決まった分
単価の分母は最初の段にあり、成果は最後の段にある

自社の記録に当てはめると、段はもっと具体的になります。獲得した件数。そのうち実際に連絡が試みられた件数。先方の担当と会話が成立した件数。日程と論点が決まって商談になった件数。この4つの段を数えると、単価の分母に置いていた「獲得した件数」が、最後の段までにどれだけ残っているのかが見えます。

「消えた」と「断られた」は違います。断られたのなら、相手の状況か、こちらの提案か、時期のいずれかに理由があり、次に活かせます。消えたリードには、その理由すら残りません。誰も連絡していないので、そもそも対象外だったのか、時期が合わなかっただけなのかも分からない。単価を議論する場に出てくるのは獲得の件数と商談の件数だけですから、その間で理由を残さずに消えたものは、どちらの数字にも姿を現しません。数字の上では存在しないのに、投じた分だけは分子に乗っている——これが、増やす判断の前に見ておきたい一つめの場所です。

ここで確かめたいのは、消えている割合そのものではありません。消えている場所が、チャネルを足しても直らない場所にあるかどうかです。連絡が試みられていないのなら、原因は供給される量と優先順位の付け方の側にあります。会話が成立していないのなら、渡し方と最初の一言の側にあります。どちらも、新しい経路を足すことでは改善しません。むしろ供給が増える分だけ、同じ場所での目減りが増えます。

消える場所を特定できるかどうかは、記録の粒度に左右されます。誰がいつ連絡したのかが残っていなければ、連絡が試みられたかどうかすら分かりません。記録が薄いままチャネルを増やすと、増やした後に何が起きたのかも、同じように分からなくなります。増やす前に見る、という順序を勧めるのは、記録の薄さが後からは取り返せないからでもあります。

先に直すべき場所があるかどうかは、この4つの段を数えるだけで分かります。

単価の比較は、獲得の時点ではなく商談の時点でそろえる

ここでそろえたいのは、分母の大きさではなく、どの時点で切るかのほうです。チャネルを比べるときに使われる「1件あたり」の数字は、そのままでは比較になりません。何を1件と数えるのかが、チャネルごとに違うからです。資料をダウンロードした人を1件と数えることもあれば、問い合わせフォームから連絡が来たものを1件と数えることもあり、展示会で名刺を交換した相手を1件と数えることもあります。同じ「1件」でも、商談までの距離はまるで違います。

距離の違う数字を横に並べると、商談から遠い数え方をしているチャネルほど単価は低く見え、近い数え方をしているチャネルほど高く見えます。並べ方のほうが結論を作ってしまう、ということです。

そろえ方そのものは難しくありません。

チャネルの単価を比べる前にそろえる4つのこと
1
1件の定義を書く
どの状態になったら1件と数えるかを、チャネルごとに書き出す
2
後工程の歩留まりを並べる
1件から商談までのどの段で何が落ちるかを、同じ物差しで見る
3
自社に残る手間を数える
調べる・書く・送る・返事を捌くを、誰がやるのかで数える
4
商談の件数で割り直す
かけた分を、獲得ではなく商談に至った件数で割る
1件あたりの数字は、定義と後工程をそろえてはじめて比較できる

最初に、チャネルごとに「どの状態になったら1件と数えるか」を文章で書き出します。次に、その1件から商談までの間に、どの段で何が落ちているかを同じ物差しで並べます。ここは前の節で数えた4つの段がそのまま使えます。3つめに、自社の側に残る手間を工程で数えます。リストを用意するのは誰か、文面を書くのは誰か、送るのは誰か、返ってきた連絡を受けるのは誰か。外に出したように見えても、確認や手直しの作業が社内に残っていれば、それは自社が担っている工程です。最後に、かけた分を、獲得の件数ではなく商談に至った件数で割り直します。

この割り直しをすると、順位が入れ替わることがあります。獲得の時点では見劣りしていたチャネルが、商談の時点では前に出てくる。逆のことも起きます。順位が動くこと自体が、獲得の時点だけを見て判断していたという証拠になります。

順位が入れ替わる理由は、単純な算数です。入口の条件がゆるいチャネルは、1件を安く数えられる代わりに、そこから先で落ちます。入口が狭いチャネルは、1件あたりでは高く見えても、落ちにくい。どちらが優れているという話ではなく、同じ時点で切らないかぎり両者は比べられない、という話です。そして会議に出てくる数字は、たいてい入口の側で切られています。

そろえられないこともあります。商談までの記録が残っていないチャネルや、始めたばかりで判断の材料がないチャネルです。その場合は、無理にそろえた数字を作らず、「この経路は入口の数字しか出せない」と書いておくほうが安全です。そろっていない数字にそろっているふりをさせると、次の四半期にもう一度同じ議論をすることになります。

手間を数えるときは、時間の総量ではなく作業の単位で並べるほうが実態に合います。1件について誰が何をするのかを書き出す——調べる、書く、確認する、送る、返ってきた連絡を捌く。この形にすると、同じ作業が二重に走っている経路や、始めてから一度も見直していない作業が見つかります。単価をそろえるための作業が、そのまま運用の点検になります。

手間を工程で数える作業には、副産物もあります。どの工程を自社に残し、どの工程を外に出すのかが、比較の途中で決まっていくことです。私たちのサービスで運営側がどの工程を担い、各工程で何を決めて何を開示するのかは、サービス詳細に5つの工程として公開しています。

「待つ」チャネルと「待たない」チャネルは、会える相手の決まり方が違う

数え方をそろえても、まだ比べきれないものが残ります。そのチャネルが、相手が動くのを待つ構造なのか、こちらから会いに行く構造なのかという違いです。この違いは単価の高低ではなく、単価がこれからどう動くかに効いてきます。

待つチャネルと待たないチャネルは、会える相手の決まり方が違う
待つチャネル
相手が探し始めた瞬間にしか会えない
会える相手の数は市場が決める
同じ相手を狙う会社が増えると取り合いになる
待たないチャネル
会う相手を自社の条件で決められる
会える相手の数は条件の設計で決まる
相手はまだ探していないので、送る理由の説明が要る
どちらが優れているかではなく、会える相手の決まり方が違う

待つチャネルは、相手が探し始めた瞬間にしか会えない

検索、広告、比較サイト、展示会、紹介。これらはどれも、相手が課題を自覚して動き出した瞬間に居合わせるための手段です。だから、相手の状況が整っていれば話は速く進みます。入口で説明しなければならないことが少なく、商談までの歩留まりも高くなりやすい。ここが待つチャネルの強みです。

弱みは、会える相手の数を自社では決められないことにあります。いま探している会社が何社あるかを決めるのは市場です。そこに同じ相手を狙う会社が増えれば、限られた相手をめぐる取り合いになります。単価が上がったという事実の背後にあるのは、多くの場合この構造です。そして構造が原因である以上、同じ性質の経路をもう一つ足しても、取り合いに参加する自社の窓口が一つ増えるだけになります。

待つチャネルの単価が上がっていくのには、こうした理屈があります。いま探している会社の数は短い間では増えないのに、そこへ向かう会社は増え続ける。自社の運用が下手になったわけではなく、同じ場所に人が集まっただけ、という場合が少なくありません。運用の改善で取り返せる幅と、構造で決まっている幅を分けておかないと、改善の努力だけが際限なく続きます。

待たないチャネルは、会う相手をこちらの条件で決められる

いま探していない会社にも、こちらから接点を作りにいくのが待たないチャネルです。会える相手の母数は、市場ではなく自社が置いた条件で決まります。条件を変えれば母数も動き、動かした理由も自社の側にあります。単価の議論に引き付けて言えば、分母を自社の意思で動かせるということです。

代わりに引き受けるものもあります。相手はまだ探していないのですから、「なぜいま、この会社に連絡したのか」を送る側が説明しなければなりません。説明できなければ、それは相手にとって無関係な連絡です。待たないチャネルの成否は、この説明を条件から作れるかどうかにかかっています。

もっとも、待たないチャネルにも待ちはあります。送った後に返事が来るかどうかは相手のタイミング次第で、こちらでは決められません。決められるのは、誰に、どんな理由で送るのかまでです。「待たない」というのは会う相手を選べるという意味であって、成果が早く出るという意味ではありません。ここを取り違えると、思っていた時期に数字が出ないという理由だけで、条件の設計ごと捨ててしまうことになります。

もう一つ、前提の確認をしておきます。待たないチャネルが噛み合うのは、法人向けで、買い手を条件で言えて、1件の受注が送信と返信対応の手間に見合う商材です。個人向けの商材、相手を条件で絞れない商材、返信を受け止める人がいない体制では、経路を変えても同じ場所で止まります。

どちらを選ぶかではなく、いまどこに立っているかを見る

リード獲得の手段を、待ち方と宛先の精度で置いてみる
相手が動くのを待つこちらから選ぶ宛先条件が精密宛先条件が粗い展示会・紹介検索広告リストを買って一斉送信条件で絞って送る
こちらから選べるかどうかと、宛先の精度は別の軸になる

2つの軸で置いてみると、「こちらから選ぶ」ことと「宛先の条件が精密である」ことは別の軸だと分かります。買ってきたリストに一斉に送る方法は、こちらから動いている点では待たないチャネルですが、宛先の条件は粗いままです。動く向きだけを変えても、届く相手が変わらなければ結果は変わりません。

この2つは、どちらかを選ぶものでもありません。いま探している会社に会える経路は、それはそれで有効です。問題なのは、単価が上がったときに、同じ性質の経路をもう一つ足すという反応が反射的に出てしまうことのほうです。

選ぶ側に回るとき、最初に決めるのは条件であって件数ではない

待たないチャネルを検討し始めた会社との会話は、たいてい件数から始まります。何件送れるのか、何件送れば何件返ってくるのか。気持ちは分かります。件数は表に書ける数字で、条件は書きにくい言葉だからです。

けれども順序は逆です。件数は条件が決まれば後から出てくる数字であり、条件の決まっていない件数は、ただの母集団の大きさでしかありません。

件数から入る会話には、副作用が2つあります。一つは、母数を確保するために条件をゆるめる方向へ力が働くことです。もう一つは、うまくいかなかったときに、何を変えればよいのかが分からなくなることです。条件が言葉になっていれば、外した条件を戻す、動きの条件を差し替える、といった直し方ができます。件数だけで始めた運用には、直すための取っ手がありません。

条件は、性質の違う2種類を重ねて作ります。どんな会社か、という外枠。いま何をしている会社か、という動き。この重ね方と、公開情報から動きを読み取る手順は「フォーム営業の送信リストの作り方」に書いたので、ここでは繰り返しません。この記事で言いたいのは、条件を決める作業がチャネル選択そのものの前に来る、ということです。条件が言葉になっていなければ、待たないチャネルは選びようがありません。

宛先を選ぶための情報に価値があること自体は、古くから定量化が試みられてきた領域です。Rossi らの研究(1996)は、顧客について何を知っているかによって、同じ販促の成果がどれだけ変わるのかをモデルで試算しています。ただしこれは消費財のクーポン配布を対象にしたモデルベースの試算であり、実測実験でも、フォーム営業を扱った研究でもありません。ここで借りたいのは数値ではなく、宛先を選ぶための情報はそれ自体が価値を持つ資源として扱える、という見方のほうです。

条件を決めると、副産物も付いてきます。条件はそのまま「なぜこの会社に送ったのか」の説明になり、一通目の書き出しになります。条件を文面へ翻訳する方法は「フォーム営業の文面の書き方」にまとめています。

条件を決める作業は、発注するかどうかとは独立に価値があります。理想の顧客を条件で言えるようになれば、その言葉は展示会でどのブースに立つか、広告でどの語に入札するかにも効きます。待たないチャネルを選ばなかったとしても、この作業だけは手元に残ります。

正直に書いておくと、条件をきちんと決めるほど、送れる相手は減ります。業種と規模だけで抽出したときの件数から見れば、目減りしたように見えるはずです。それでも減った分は「送っても話が始まらなかった相手」であり、受け取る側から見れば「関係のない連絡を受け取らずに済んだ相手」です。減らすことは損失ではなく、分子を無駄に増やさないための設計だと私たちは考えています。

ただし、条件を絞って送っても、返ってきた連絡を読んで返すのは自社の仕事として残ります。はじめに数えた4つの段で「まだ連絡していない」の欄が厚いままなら、先に埋めるのはそちらです。

とはいえ、条件を言葉にする作業は、慣れていないと手が止まります。理想の顧客像は頭の中にあるのに、条件の形で書き出そうとすると出てこない。これは珍しいことではありません。私たちのサービスでは、この条件設計を運営側が行い、フォーム営業(企業サイトの問い合わせフォームから営業の連絡を届ける手法)として、送信と記録までを一つの運用として回しています。初回相談は、商材に合わせたセグメント案と、実際に送信できる母数の提示から始めます。

受け取る側から見ると、増やした分だけ迷惑も増える

ここまでは、送る側の都合で話を進めてきました。単価も、歩留まりも、母数も、送る側から見た言葉です。同じ話を受け取る側から見ると、風景が変わります。

チャネルを増やすという判断は、受け取る側にとっては接触が増えるという意味しか持ちません。その連絡が自社に関わりのあるものかどうかに、送り手の事情は入り込みません。フォーム営業が迷惑だと言われるとき、批判の矛先は手法そのものよりも、相手を選ばずに量を増やす設計に向いていると私たちは考えています。

受け取る側に立ってみると、送り手が単価を計算していることは見えません。見えるのは、自社に関係があるかどうかだけです。関係のある連絡なら、それは営業ではなく情報として読まれます。関係のない連絡なら、丁寧さの度合いにかかわらず処理の手間になります。この線引きは、文面の巧拙よりずっと手前で、宛先の条件によって決まっています。

だから、母数を増やす方向の選択肢のうち、私たちが取らないものがあります。買ってきたリストに一斉に送ること。営業の連絡をお断りしている企業に、その表示を見ないまま送ること。同じ企業に、前に送ったことを忘れて重ねて送ること。営業目的の連絡をお断りしている企業を案件横断で除外する仕組みや、送信した文面を全文記録して後から示せるようにする実装は、コンプライアンスへの取り組みとして公開しています。

送らないという判断を仕組みの側に持てているかどうかも、ここに効いてきます。判断の基準を人の記憶に置いていると、量が増えた瞬間に破綻します。除外の条件を仕組みの側に置いておけば、量が増えても判断は変わりません。増やすことを検討するのであれば、増やしても壊れない除外の仕組みが先に要る、ということです。

この設計は、送れる相手を減らします。単価だけを見れば、分母を自分から削っているように見えるはずです。それでも削るのは、削った先にある評判が、次の四半期の分母を決めるからです。関係のない連絡を受け取り続けた会社は、やがてその手法自体を拒むようになります。目先の母数のために手法そのものを焼き切ってしまえば、来期に選べる手が一つ減ります。

増やす前に見る場所を探すという話は、結局ここに戻ってきます。手元のリードを最後まで運ぶこと。比べる時点をそろえること。待ちの構造を確かめること。どれも、受け取る側に負担を移さずにできることです。

まとめ

単価が上がったときに最初に浮かぶ「別のチャネルを足す」という案は、伸びしろの理由ではなく、始めやすさの理由から浮かんできます。獲得したリードは後工程で消えることがあり、消えている場所によっては、経路を足すほど同じ場所での目減りが増えます。チャネルの単価は、1件の定義・後工程の歩留まり・自社に残る手間をそろえ、商談に至った件数で割り直して、はじめて比較できます。待つチャネルは会える相手の数を市場が決め、待たないチャネルは自社の条件が決めます。そして選ぶ側に回るときに最初に決めるのは、件数ではなく条件です。

今日30分でできる次の一歩は、先月獲得したリードの一覧を開いて、いまどの状態にあるかを数えることです。まだ連絡していない、連絡したが返事がない、会話が続いている、商談になった。この4つに仕分けるだけで、増やすべきなのか直すべきなのかの見当が付きます。手が止まるのは、たいてい「まだ連絡していない」の欄が想像より厚いときです。その厚みは、新しいチャネルでは薄くなりません。厚みがないと分かったときに初めて、理想の顧客を「どんな会社か」と「いま何をしている会社か」の2つで書き出す作業が意味を持ちます。

出典

  1. Sabnis, G., Chatterjee, S. C., Grewal, R., & Lilien, G. L. (2013). The Sales Lead Black Hole: On Sales Reps' Follow-Up of Marketing Leads. Journal of Marketing, 77(1), 52–67. https://doi.org/10.1509/jm.10.0047
  2. Rossi, P. E., McCulloch, R. E., & Allenby, G. M. (1996). The Value of Purchase History Data in Target Marketing. Marketing Science, 15(4), 321–340. https://doi.org/10.1287/mksc.15.4.321